写真作品集『長江六千三百公里をゆく』出版のお知らせ

初冬の候、いかがお過ごしでしょうか。
このたび、冬青社より写真作品集『長江六千三百公里をゆく』を上梓致しました。二十歳で写真家を志し、一歩一歩と歩み続けた活動の軌跡を、ようやく初の写真作品集にまとめることができました。今日までさまざまな場面で出会い、活動を支えて下さった皆様には心から感謝を申し上げます。

本写真作品集に収められた133点の作品は、1998-2007年に中国の大河・長江6300kmの流れを辿る旅の中で撮影されました。

私は写真家の撮影助手として1996年に初めて中国を訪問し、長江と出会いました。そして翌年から5年間、毎年1~2カ月間を長江各地で行われる学術調査に随行し、さらに2000年には調査活動の一環として長江沿いの自然、史跡、少数民族の村々を約半年をかけて旅する機会にも恵まれました。中国では単身で旅することがまだまだ不便で困難だった時代、行く先々で出会う人々の親切にどれほど助けられたことか…。すっかり長江に魅せられた私は、さらなる旅へと向かいました。押し寄せる開発の波と先を競うように、時に孤独と焦燥感に押しつぶされそうになりながら、写真家としての使命に突き動かされる日々が始まりました。そうして長江の旅を一通り終えた2004年以降も、新たなテーマ取材の途上で、たびたび長江の流れと再会を果たしてきました。しかしながら2008年に北京オリンピックが開催され、2009年に三峡ダムが完成、同じ年に撮影機材をデジタル化したこともあり、あるひとつの時代が終焉したという感慨と共にこれまでの旅にひと区切り付けることにしました。

これまでに長江に関する写真は、『長江文明の探求』(共著・新思索社・2004年)、『大長江~アジアの原風景を求めて』(光村推古書院・2005年)という2冊のビジュアル本にまとめられています。

今回の写真作品集は、さらに10年以上を経て2020~2021年に制作に取り組みました。過去の出来事、人物、風景と対峙するわけですから、自身の感覚としては多少大げさかもしれませんが「叙事詩」を編むような気持で臨みました。多様な人間の営みが千変万化する川の流れと混然一体となりながら観る人の記憶に深く刻まれる――そのような作品集にしたい。なぜなら、あまりに急激な経済開発によって、私が目にした風景や人々の営みの多くはすでに消失しており、だからこそ、写真という記録の連なりが、ある時代を生きた人々の営みを崇高なものとして永遠化し呼び覚ます「現代の叙事詩」にもなり得るのではないかと考えたからです。

ご興味を持ってくださる方には是非お手に取っていただけましたら幸いです。

今後ともご指導、ご支援のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

                                                   2021年12月5日  竹田武史

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